2007年3月15日号
   
 

 

 

  

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農林抄(論説)農林抄一覧
 
   「有機農業推進基本方針への補強」
        前JA兵庫六甲営農経済事業部専任、現京都精華大講師 本野一郎
 
 
<書き出し> すでに農水省から基本方針案が提示され、パブリックコメント募集の最中ですから、この案への意見に絞ります。ただ、その前に基本方針の前提となる有機農業推進法についての見解を述べます。私は、有機農業推進法が超党派の議員立法であることを大きく評価しています。何故なら、これまでの農水省の方針は、「管理すれども奨励せず」であり、有機農業に対する推進はしないという立場でした。それを政治家の見識によって、これからの日本農業にとって有機農業は重要な要素だと判断がくだされたことで、国の方針が180度の転換をしたわけです。また、この推進法は有機農業学会の法案を参考にしながら作られたものであり、法案の段階で議連から有機農業陣営にたびたび相談があったことを踏まえると、この法律は、市民参加で作られたという意味で「市民立法」といえると思います。・・・





焦  点 「野菜「産地廃棄」継続へ」
 
 
 農林水産省では、豊作時の野菜「産地廃棄」に代わる案を国民から募集していたが、わずか1週間で585件も寄せられ、改めて関心の強さを示した。代替案は、計画生産の徹底はじめ、低氷温保管など保存性を向上しての出荷の先送り、輸出援助、飼・肥料化、燃料化など。最も多かったのは「消費拡大」に関する事項で、豊作時に消費拡大を国民に呼びかける案だ。こうした案について3月5日、検討委員会で審議されたが、いずれも「コスト増につながる」として、却下された。大方の予想通り「産地廃棄」は継続されることとなったが、豊作時に消費拡大を促す案は採用し、最適な手法を検討し報告書に盛り込む見込みだ。



緊急企画 「有機農業推進法成立記念特集」<3> (季刊特集有機
 
   「有機拡大に認証料支援、減収補填明記を」
       週刊農林編集部
 
      はじめに
      有機農産物「安全・安心は誤解」削除すべし
      有機推進の基本的事項
      有機農業の推進・普及目標
      5年と10年の生産拡大目標設定を
      有機農業推進施策
      「環境直接支払い」創設明記を
      その他事項とスケジュール
      付表・有機農業の推進に向けた現状と課題
 
 
 <要旨> 農林水産省は2月27日、有機農業推進基本方針策定に向けた2回目となる食・農・村政審生産分科会に「有機農業の推進に関する基本的な方針」案を提示し、議論した。基本方針案は、@有機農業推進の基本的事項に有機農業技術を確立・普及する取組を「最重点」(農水省)に位置付け「強化」するとともに、有機農業取組支援施策を「充実、積極的な活用を図る」、「潜在的需要のある」有機農産物を増加させるため有機農産物の「生産拡大に努め、連携・協力により流通・販売、利用の拡大に取り組む」との方針を盛り込むB07−11年度までの5年間の「有機農業の推進・普及目標」は、安定的に品質・収量を確保できる有機農業の技術体系の確立、普及指導員による有機農業の指導体制を整備した都道府県割合100%、「有機農業推進計画」を作成・実施する都道府県割合100%、推進体制が整備されている割合を県100%、市町村50%以上をめざすB「有機農業取組支援」は、地域でまとまって有機農業を含む環境負荷を大幅に低減する先進的な取組農業者にも配分可能な交付金を交付する「農地・水・環境保全向上対策」を活用する――というものだ。しかし問題は、前書きの「はじめに」で、有機農産物は「安全・安心」な農産物ではないし、「健康によい」とはいえないのに、「消費者や実需者の多くは」「安全・安心」「健康に良い」というイメージで選択しているのは誤解だと解釈される惧れがあるくだりがあることだ。国際基準に準拠した有機JSA規格に基づき生産された農産物は「安全・安心」でない、「健康」にもよくないということになる。法3条理念とも矛盾する文言は、消費者に誤解と混乱をもたらすことから削除すべきである。そのうえで、誤解を解消するために有機農業に対する消費者の理解増進目標に「有機農産物は安全・安心で滋養豊かである」を、消費者の理解と関心の増進施策として「安全・安心で健康を増進する農産物の提供」を加え、消費者に環境保全・創造機能と併せて理解を広めていく必要があろう。また体制整備の準備期間に5年もかけるというのは、いかにも長い。都道府県「推進計画」は1年で、これに基づき策定する市町村実施計画は1−2年で策定というぐらいが適度なスピードだろう。日本は有機農業の推進、普及がただでさえ遅れているのに、5年間も生産・消費拡大目標を設定しないというのはもどかしい。体制整備の準備期間は3年間とし、生産拡大目標は5年と10年を設定した10年計画を策定すべきである。さらに有機農業を普及拡大するには、最大のネックである有機JAS認定料への助成と認定申請書類作成に必要なソフト開発を早急に行なうことに加え、転換に伴なう減収・品質低下に5年程度減収補填する制度を創設することを支援策として明記すべきである。加えて「まとまり要件」が障害となり有機農業者が排除される懸念がある「農地・水・環境保全向上対策」とは別途、有機農業者や地方行政から要望の強い「環境直接支払い制度」について、「意見反映」の観点から創設を明記する必要があろう。農水省は、この基本方針案について分科会に加え、パブリックコメントでの意見・提案を踏まえ修正、最終案として取りまとめ、今月下旬に開かれる生産分科会で了承を得れば、基本方針として決定する予定だ。
 
   「有機農業推進法と有機JAS認証制度が国内農業の振興につながるために」
       (財)自然農法国際研究開発センター認定事務局長 今井 悟
 
      国内有機市場は海外有機JASに依存
      国内有機認定農業者の要望
      有機農業の推進に関する基本的な方針案への要望
       (1)技術開発と技術支援
       (2)認定料の助成や直接支払い
       (3)有機JAS認定者へのコンサルティングの充実


     
読み切り
 
   「「有機農業推進基本方針」策定への提案」
       今治市企画課政策研究室長・前農林振興課地産地消推進室長 安井 孝
 
      今治市食と農のまちづくり条例
      国の基本的な考え方への意見
      有機農業を環境保全型農業の一形態から独立した農業に
      地方自治体の責務


     
読み切り
 
緊急企画 「有機農業推進法成立記念特集」<3> (季刊特集農業政策
 
   「「西日本における放牧の新たな展開」<最終回>
       近畿中国四国農業研究センター粗飼料多給型高品質牛肉研究チーム主任研究員
       高橋佳孝
      人材こそが地域資源
      終わりに
      付表・里地里山再生モデル事業の概要(愛媛県資料より作成)
 
農林水産ニュース&解説
 
 農協・金融
    公取委が農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針となる「農協ガイドライン」(原案)をまとめる
 
食品・安全
    厚労省研究班の調査でビタミンCの摂取量が多くなるにつれて、老人性白内障発症リスクが低くなることが分かった(2/27)
 
畑作・果樹
    中央果実基金が「果実王国日本・ブランドで輸出拡大を」と題する果実輸出戦略をまとめる(3/7)
 
林   野
    林野庁が「森林・林業・木材産業研究・技術開発戦略」「木材産業の体制整備・国産材利用拡大基本方針」「林木育種戦略」策定
 
水   産
    磯焼け対策モデル全国会議がウニや植食性魚類の食害による磯焼け対策を解説した「磯焼け対策ガイドライン」