2007年2月25日号
   
 

 

 

  

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農林抄(論説)農林抄一覧
 
   「団塊世代と若者は放牧を!」
        お米の勉強会代表 村山日南子
 
 
<書き出し> 米糠利用と林間や放棄田畑への放牧によって飼料の自給ができ、しかも健康で美味しく香りの高い牛肉が安く生産できるという。かつて五嶋さんの短角牛を味わっていたので、美味しさと値段の手ごろさは保証できる。何より安全であり、安心して家族にご馳走できて嬉しかった。では、誰が放牧畜産の主役を担うのか。団塊世代と若者はどうか。五嶋式放牧畜産は経営的不安も解消できそうである。牛肉生産に限らず、乳牛も豚も鶏も放し飼いが、環境面からも人や生き物の健康面からも求められる時代でもある。彼らは、新規就農だからこそ新しい方法に果敢に挑戦できる。都市での暮らし、企業での経験と能力、心地よい暮らしを望む感覚等から、消費者の動向を掴み易く、市場出荷、産直とも自前で開拓できる可能性が高い。かつての同僚とチームを組んでの生産・販売もできるだろう。・・・





焦  点 「豊作野菜の「産地廃棄」代替案検討へ」
 
 
 好天候による野菜豊作で小売価格が暴落するたびに行なわれる産地廃棄について、国民から「もったいない!」との声が寄せられていることから、農林水産省は野菜の緊急需給調整手法の見直しに着手した。同省は2月15日に開いた検討委員会に、産地廃棄に替わる手法の条件として、@供給量を増やさないA財政負担を増やさないB日持ちしないことを踏まえるC必要なときにすぐに行える――のすべてをクリアする必要があるとした。松岡農相は会見で「特別なアイディアというのは、なかなか思いつかなくて」と話し、国民から広くアイディアを募集することになった。委員会では、産地廃棄手法を支持する意見が相次いでいる。



特  集 「飼料自給戦略の研究」<4> (季刊特集
 
   「輸出減少は実質8年続く」
      〜米国産トウモロコシの需給分析〜
       週刊農林編集部
 
      アイオワ州立大は輸出ゼロ試算
      トウモロコシ急騰要因
      農務省「長期需給予測」
      中長期的に4−5ドル台の高原相場
      専門家の分析と観測
      「禁輸ありえない」「日本は買える」
      付表・アメリカのトウモロコシ需給状況と燃料エタノール用、輸出等トウモロコシの需要予測
 
 
 <要旨> 9割を輸入に依存する飼料の主穀・トウモロコシがいま、急騰している。昨年9月に1ブッシェル2ドル台だったのが、わずか3ヶ月で7割も急騰、1月には4ドルラインを突破、史上最高値を記録した96年の相場展開と似た様相を呈しつつある。これは世界の貿易量の7割を占めるアメリカのトウモロコシ需給が燃料用エタノール需要の急増で逼迫、期末在庫率が6・4%と史上2番目の低水準に落ち込み薄氷を踏む状況にあるからだ。今後の需給や相場見通しについては、アメリカ農務省は2月14日発表した「長期予測」で、2・7倍増を見込む燃料用エタノール需要の増大に対応するため、期末在庫が史上最低の払底状態といえる4・5−5・7%という逼迫状況が続くことを背景に先物相場を4ドル台、一時的には5ドル台という高水準に10年以上にわたってキープし、これをテコに農家の生産意欲を喚起・誘導し、作付面積を05〜16年度までの11年間に10%増加、遺伝子組み替え品種の普及拡大により単収も15%増加させ生産量を27%増大させようというシナリオを描き出している。しかし、エタノール用需要拡大の圧迫で日本が最も関心を寄せる輸出量は昨年、3割増と強気に観ていた見通しを大きく下方修正、07年度以降3年間は16%減の4700万トンと漸減していくと予測している。07年度の減少予想量700万トンは日本の輸入量の6割に相当するものだ。実質的に8年間は現状より輸出が減る状況が続く。これは明らかに輸出促進方針の大きな修正であり、エネルギー安全保障を優先する方向への転換である。しかし、単収が予想どおり増加しなかったり、旱魃や熱波、大洪水など異常気象による天候不順で不作となれば、このシナリオは崩れ、在庫はたちまち払底、逼迫した需給はパンクし、供給ショートという最悪の事態が起こりかねない。そうした場合、国内向け需要を減らし、輸出を担保できるのか。レスター・ブラン理事長率いる「アースポリシー研究所」は08年度の燃料用エタノール需要量は06年度の約2・5倍増、生産量のほぼ5割相当と推計。これが妥当ならば農務省の予測以上に輸出需要は圧迫される。さらにアイオワ州立大の研究者グループは15年に約4割増加する生産量の7割はエタノール向けに利用されるため「輸出量はゼロになる」とのショッキングな試算を発表。元ブッシュ大統領補佐官や政治家もゼロ予測を口にしている。日本国内でも飼料生産に詳しい専門家は、「トウモロコシの需要構造が構造的に変化し、どう見たって足りなくなる。2、3年後に輸入が止まるのではないか。早く手当てをしないとメガファームがバタバタ潰れる」と警告している。しかし、こうした懸念、とりわけ最悪のシナリオである輸入ストップについて、穀物貿易で実務経験のある専門家は、「ありえない。アメリカは輸出制限しない。日米戦争でも起こらない限り」とキッパリと否定する。アメリカは80年に対ソ穀物禁輸に踏み切ったが、海外市場を失って供給過剰に陥り、その後7年間、大恐慌以来の農業不況に見舞われた。だから「穀物を買う買わないは市場に任せると言っている」。「ただ、輸出が減るのは避けられない。日本は高くても買うだろう」と観る。さて、アメリカは80年代の経験に学び今回の危機的状況においても、市場原理に委ねるのか、それともブッシュ政権のエネルギー安全保障を最優先する新エネルギー政策や需要構造の変化に対応してトウモロコシ市場構造が輸出推進型から内需主導型に移行しつつある中で、政治的・政策的に優先順位を変化させるのか、見極めが難しい状況にあって、いかなる事態をも想定し、対応できる危機管理・食料安全保障対策を準備しつつ、動向を注意深くウオッチしていく必要があろう。
 
   「飼料自給率向上への取組み」<最終回>
       農林水産省生産局畜産部畜産振興課長 釘田博文
 
      飼料自給率向上に向けた取組み
      具体的な行動計画
      飼料増産に向けた新たな対策
      飼料増産に向けた取組みの一層の推進
      付表・飼料自給率及び生産努力目標の考え方
      付表・飼料増産への取組結果
      付表・耕畜連携対策の具体的内容(耕畜連携水田活用対策事業)
      付表・畜産担い手育成総合整備事業拡充事項
      付表・飼料自給率向上に向けた平成18年度行動計画

 
    「自給飼料活用による地域酪農の再生」<最終回>
       酪農学園大学経済学科教授 荒木和秋
 
       日本酪農の競争力はなぜ弱いのか
       効率の悪い生産システム
       集約放牧による地域再生
       付表・“日本酪農会社”と乳製品輸入の競合関係
       付表・全道とH農場(集約放牧転換農場)の経営収支などの比較

 
トピックス&解説「国民が『もったいない!』」大合唱 (農業政策野菜
 
    「『産地廃棄』に代わる妙案あるか」
       週刊農林編集部
 
       キャベツ出荷1割増で47%下落
       代替案がクリアーすべき5条件
       「エコフィード」組み入れは?
 
 豊作野菜の産地廃棄に国民が「もったいない!」――。好天候による豊作で価格が暴落すると行なわれる産地廃棄だが、価格暴落で農家は悲鳴を上げ、大事に育てた「我が子」を自らの手でつぶすつらさに覆われるが、トラクターで踏みつぶされる
野菜の映像に国民の多くは「出荷して、もっと安くしてもらいたい」と疑念を抱く。農林水産省はこうした「もったいない!」の声に応えるため、野菜の緊急需給調整対策、いわゆる「産地廃棄」の見直しに着手した。2月15日に検討委員会の初会合が開かれたが、産地廃棄に替わる手法の条件として農水省は@供給量を増やさないA輸出補助金などWTO違反にならないB財政負担を増やさないC日持ちしないことを踏まえるD必要なときにすぐに行える――をクリアーする必要があると示し、代替案へのハードルは高い。委員会では現行手法を支持する意見が大半で、妙案は浮かんでおらず、このため国民から案を募ることを決めた。「市場隔離」がポイントとなるが、そこでは家畜飼料向けとしての市場隔離、いわゆるエコフィードネットワークを豊作野菜の受け皿として組み込めないものか。
 
解説「2007年度 農林水産主要新規施策」<最終回>
 
    水産業構造改革に向けた挑戦
 
 
漁船漁業構造改革の推進/漁業経営安定対策の導入/水産物流通の構造改革の推進/海洋生物資源と環境・生態系保全を軸とした漁港漁場整備の推進