2004年9月5日号
   
 

 

 

  

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農林抄 (論説/新基本計画中間論点整理への提言)
 
   「有機農業への環境支払いを」
       九州大学大学院教授 横川 洋
 
 
 広がらない有機農業 稲作では、有機農業と慣行栽培を比べれば、経営費は49%、10アール当たり労働時間は64%上回り、単収は15%低い。販売価格が高いため10アール当たり所得は71%高いが、労働時間当たりでは4%増にすぎない。(無農薬・無化学肥料栽培では13%減)。農産物販売価格が全般的に低下し農業労働力の確保が厳しい状況では、生産拡大意向の農家は1割しかない。また、市町村アンケートでは8割の市町村が環境保全を重視した農業の推進を振興方策としているが、実際に盛んだと回答した市町村は3割にとどまる。農業者や地域の関心は高いが、取組は広がらない。対策として「普及・啓発活動、肥料・農薬の使用指針の策定、地域での面的なまとまりをもった取組の創出、合理的、実践的技術体系の構築等の総合的な推進」が言われているが(平成15年度食料・農業・農村白書)、環境保全コストに対する助成はない。これで十分だろうか。環境支払いという手もあるではないか。・・・


焦 点 「諌早湾干拓工事差し止め」
 
 
 有明海沿岸4県の漁民106人が漁業被害から国営諌早湾干拓事業の工事の差し止めを求めた仮処分申し立てで、佐賀地裁は8月26日、工事を差し止めを決定した。有明海の漁業不振と干拓事業の因果関係が争点になったが、仮処分では干拓事業で有明海の潮流に変化があったことを指摘し、「環境影響評価の予測を超す地域にまで被害が及んでおり、漁業被害は深刻」と因果関係を認めた。さらに「1審判決にいたるまで、工事を続行してはならない」と命じた。農水省は27日、工事差し止めの仮処分決定について「科学的根拠もなく、事業と漁業不振の因果関係を認めている」反論し、異議を申し立てることを明らかにした。



夏季特集 「食料自給戦略の研究」<4>        (季刊特集
 
   「株式会社の農地取得は社会的貢献に終わるか」<2>
      〜農地転用で企業に農地開放を〜
       拓殖大学教授・元国民経済研究協会理事長 叶 芳和
 
      優れた農業経営者は借地志向
      アメリカも借地農業
      資本力ではなく、頭脳労働が決め手
      農村のサービス化に向けた農地転用
      テリトリー意識を捨てよ
      付表・米国の自・小作農別農家の推移


     
つづく
 
解説と論評 「新たな基本計画に向けた中間論点整理」
 
    「内外価格差を直接払い、減収分は補填」  (基本法・基本計画
       週刊農林編集部
 
      第1ステップは品目別直接支払を
      利用本位体系に農地法1条改正のとき
      環境創造型へ農業構造改革加速を

      ・担い手政策のあり方
      ・品目横断的政策の確立
      ・農地制度のあり方
      ・農業環境・資源保全政策の確立


     
読み切り
 
連  載 「横田哲治のINFORMATION」
 
    「高齢者が支える中間ビジネス」
      〜「小川の庄」の活性化戦略<上>〜
 
 
 今から20年前、長野県の北西に位置する中山間地にある小川の村で、7人の人たちが集まって、「小川の庄」は創設された。伝統的なおやきと日本そばが、その創設の機軸であった。いま、日本そばや、おやきに加えて、農家の味自慢を加え、お味噌と山菜の加工品が、都市の消費者の注目を集めている。
 

農林水産ニュース&解説

 
 総   合
    <WTO農業交渉枠組み合意> <下> 輸出型途上国優位の輸出ルールに。G20と戦略的共闘で上限関税阻止を
 
食品・安全
    農水省によると、2003年食品業界のトレーサビリティ浸潤度は20%程度、2〜3年で本格普及へ
 米麦・水田
    麦施策検討小委員会が中間論点整理。麦経を品目横断対策へ見直し。市場機能発揮に当初は品目別を
 
畑作・果樹
    野菜政策研究会が今後の野菜政策の基本方向示す。国産シェア奪還へ加工・業務用対応型産地育成へ(8/25)
 畜   産
    畜産企画部会が酪肉近代化方針見直しで担い手対象条件に「飼養頭数規模」導入の考え示す(8/9)
 金融・農協
    社会保障審議会部会が介護保険制度見直しで意見書。介護予防サービス新設。障害者福祉との統合は先送り
 
構造・農村
    離農世帯調査で、離農者農地の4割が放置されていることが明らかに。とくに農業用施設は7割が放置
 
林   野
    地球温暖化対策税制専門委員会が温暖課税は「上流課税」の方針鮮明にした報告まとめる(8/30)
 
水   産
    激減するアサリ資源回復へ水研センターらが稚貝の生態系解明へ3カ年プロジェクト