2007年夏季特集号
   
 

 

 

  

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農林抄 (論説/国産バイオ燃料増産への提言)
 
   「国産バイオ燃料生産拡大目標達成に向けた展開」
       農林水産省大臣官房環境政策課長 西郷正道
 
 <書き出し> 安倍総理の所信表明演説、ブッシュ大統領の一般教書演説等バイオエタノールを中心としたバイオ燃料について、各国ともその推進が政策上の重要な課題として認識されています。このような中、農林水産省では、バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議の場において、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた検討を進め、本年2月に工程表を総理に報告したところです。この工程表のポイントは、@山から木を安くおろす、稲わらを効率よく集める機械など収集・運搬技術の開発、Aエタノールを大量に生産できる作物の開発、B稲わらや間伐材などからエタノールを大量に製造する技術の開発、の3つであり、これらの技術開発の実現に向けて官民あげて取り組むことにより、2030年頃には600万klのバイオ燃料の生産が可能と考えています。・・・



焦 点 「台風・地震が日本列島を『激震』」
 
 
 梅雨明け間近かの日本列島を連続して災害が襲った。台風4号の襲来で梅雨前線が刺激され、6月28日から7月15日まで長期にわたり、各地で大雨被害を被った。農水省の災害速報によると、全国の農林水産業の被災状況は18日現在で207億2800万円に上り、今後さらに被害額は増えていくものと見られる。また、台風一過の16日には新潟県上中越沖を震源とするM6・8規模の大型地震が新潟・長野両県を襲った。農水省は直ちに「新潟県上中越沖地震関係局庁連絡会議」を設置、北陸農政局、関東農政局、関東、中部森林管理局には「災害対策本部」を設営した。被災状況は、18日現時点では集計されていない。



        資源循環・環境創造型バイオマス戦略 第3弾
夏季特集 「国産バイオ燃料増産の研究」<1>
 (季刊特集
 
T 国産バイオ燃料大幅生産拡大に向けた技術開発
 
   「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた資源作物の栽培研究と品種改良」<1> 
       農研機構・作物研究所研究管理監 荒木 均
 
      はじめに
      資源作物生産の目標
      資源作物に求められる特性や要素
      水稲・麦類の研究
      表・国産バイオ燃料生産可能量

     
つづく
 
   「バイオディーゼルの製造技術とディーゼルエンジンの対応技術および今後の展開」<1>
       滋賀県立大学工学部教授 山根浩二
 
      はじめに
      バイオディーゼルの国内利用の現状
      バイオディーゼルの製造技術
       (1)触媒法
       (2)無触媒法

     
つづく
 
   「ソフトバイオマスからの燃料用エタノール製造の展望」<1>
       地球環境産業技術研究機構 微生物研究グループリーダー 湯川英明
                    微生物研究グループ研究員 沖野祥平
 
      はじめに
      非可食資源バイオマスからのバイオ燃料製造への期待
      ソフトバイオマスからの燃料用エタノール生産:必要な技術要素
      表1 ソフトバイオマスからのエタノール生産に求められる技術特性
      図1 ソフトバイオマスを原料とした燃料用エタノールの生産

     
つづく
 
   「わが国における飼料自給戦略」<1>
      〜飼料自給率の向上が迫られる背景〜
       宮崎大学農学部教授 杉本安寛
 
      大打撃与えた96年飼料穀物高騰
      輸出量超える米国のエタノール向け飼料生産
      中国も数年後に飼料輸入国
      粗飼料多給型転換へ規制撤廃を付表・飼料の輸入に伴う資源移動と環境問題

     
つづく
 
   「トヨタのバイオ燃料に関する考え方」
       トヨタ自動車(株)BRエネルギー調査企画室
       シニアスタッフエンジニアー   森光信孝
 
      自動車のパワートレーンの課題
      将来の自動車燃料
      バイオエタノールエタノールへの自動車の取り組み
      バイオディーゼルと水素化処理バイオ燃料
      BTL―究極のバイオ燃料

     
読み切り
 
U アメリカ・ブラジルのバイオマス戦略と国際穀物市場への影響
 
   「アメリカにおけるトウモロコシからのエタノール生産の拡大」<1>
       東洋大学経済学部長・教授 服部信司
 
      トウモロコシ―穀物価格の急上昇
      トウモロコシのエタノール使用
      急増とエタノール・プラントの増設
      エタノール生産拡大の基礎的背景
      原油価格の上昇とエネルギー自給化政策
      アイオワ州立大学の予測
      日本の対応
      表1 トウモロコシのエタノ−ル向け使用
      表2 エタノール・プラント
      表3 再生燃料使用基準量

     
つづく
 
V バイオプラスチックの用途拡大と原料コストダウンに向けた研究開発
 
   「バイオマス・プラスチックの実用化に向けて」<1>
       バイオインダストリー協会事業推進部長 大島一史
 
      天然物を利用するBP
       ・セルロース誘導体
       ・澱粉、および澱粉誘導体
      ニュータイプ(バイオマス変性系、およびバイオポリオレフィン)
      資源穀物や未利用バイオマスを利用するBP
       ・PLA
       ・PBS
      微生物を利用するBP

     
つづく
 
W 自然エネルギーの循環的利用・地産地消システム確立に向けた取組
 
   「エネルギー、マテリアル資源の地産地消をめざして」<1>
      〜「上越市バイオマスタウン構想」実現〜
       上越市産業観光部産業振興課中小企業支援室主事 平原謙一
 
      上越市の概要
      バイオマスタウン構想策定の背景
      上越市バイオマスタウン構想の概要
      「上越市バイオマスタウン構想」実現に向けて
      エネルギー、マテリアル資源の地産地消をめざして

     
読み切り
 
 
編集室
 
 2007年夏季特集シリーズの統一企画テーマは、「資源循環・環境創造型バイオマス戦略の構築と展開」第3弾として「バイオ燃料の生産拡大を柱とするバイオマス戦略の展開による新産業の創出と雇用拡大、農林漁業の振興・農山漁村地域の再生・活性化」としました。ご承知のように、世界のエネルギー需給は、中印等アジア諸国を中心とする需要の急増や産油国の供給余力の低下という構造変化を背景に需給が逼迫、原油価格は一時70ドルを超え高水準で推移しています。このためエネルギー資源獲得競争が激化、世界的にエネルギー確保が重要な国家戦略となっています。このため米国はエネルギー政策法を制定しバイオ燃料生産を12年までの6年間に倍増し75億klまで拡大、この1月にはブッシュ大統領が一般教書演説で17年までに再生可能燃料の使用目標を350億klに増加させる方針を打ち出し、エタノール需要向けトウモロコシ生産が急増しております。EUも再生可能エネルギー比率を20年までに20%に拡大する目標を設定するなど、欧米諸国は、脱化石エネルギーの方向でエネルギー戦略を転換しつつあります。こうした現況にあって日本は石油供給の約9割を中東に依存する脆弱なエネルギー供給構造が依然解決されないまま。再生可能エネルギー供給量比率は04年実績1・9%、10、30年目標はそれぞれ3%、7%というお寒い状況で、とりわけバイオ燃料の生産量は30klと生産量・技術・制度の各面において極めて立ち遅れています。
 こうした状況を踏まえ政府はこの2月、国産バイオ燃料を大幅に生産拡大する工程表を策定しました。これは国産バイオ燃料の生産目標を4年後の11年度に5万kl、さらに19年後の30年度にはガソリンの年間消費量の1割相当、600万klとするものです。しかし、この30年度目標は、世界水準から見れば極めて低い水準であり、草類の面積量や資源作物の遺伝子組み替えによる単収増加の可能性、可耕されていない耕地面積量等、バイオマスの潜在的賦存量を十分精査し、中長期的にガソリン消費量の3〜5割程度(E10ベース比)を戦略的目標として追求していくべきです。再生可能エネルギーの供給量目標も30年目標で、せめてEU並みの20%程度を目標とすべきでしょう。一見、不可能と見える目標を掲げることが戦略目標であり、その目標を達成するための計画こそが戦略といえるもので、その可能技術は革新技術といえます。目標達成に資金と時間と労力、頭脳を集中的に投入すべきです。この目標達成に向けた戦略の構築と展開により、エネルギー需給構造の変化に対応したエネルギー供給・産業構造の改革による新たな21世紀型エネルギー産業、
資源循環・環境創造型産業を創出し、雇用を拡大・就業構造を改変し、農林漁業の振興・農山漁村地域の再生・活性化を図り、資源循環・環境創造型農業・農村を創造していくことをめざすべきです。
 この戦略目標とビジョンを実現するため、食用と競合せず、アジアモンスーン気候で傾斜地や山地の多い国土地形のあらゆるところに繁茂する草資源と、資源作物を遺伝子組み替え技術によりバイオマス量を最大限に増大できる品種に早急に改良し、大量エネルギー転換技術の開発を最優先に推進すべきです。そのうえで本誌長期予測で50年に可耕地の2割弱の35万ha強に達すると推計される水田等非利用地に作付け拡大するとともに、全国に散在し放置されている木質系バイオマスもエタノール高効率変換技術と木材を効率的に収集・運搬可能となる高性能林業機械を開発することにより、国内農業・森林資源を最大限に活用しなければなりません。クリーンなディーゼルエンジンの開発とナタネ・ヒマワリの高収量品種への改良で「菜の花プロジェクト」運動に弾みをつけ、全国展開を加速していきたいものです。

週刊農林編集部