2002年7月25日号
 

  

数量     
   



農林抄 (論説/米改革・水田農業振興戦略への提言)
 
   「新しい生産調整のねらい」<上>
       生産調整研究会座長・東京大学大学院教授 生源寺真一
 
 今回の中間とりまとめで、ようやく道半ばといったところか。具体的に詰めるべき宿題が少なくないからだ。けれども、米政策と水田農業政策の基本方向については、それなりに明瞭な姿を示したつもりである。生産現場で強い関心の寄せられている生産調整の問題に絞って、改革の要点を述べる。・・・



特 集 「米改革・水田農業振興戦略」<1> 
 
 〜構造改革めざした米改革・水田農業振興戦略〜
 
   「生産調整研とは何か」<1> 季刊特集
       宮城大学大学院教授 大泉一貫
 
      破綻した農協の米政策
      「米政策研」に名称変更を

     
つづく
 
   「コメ政策改革構想」<1>  (季刊特集
       国際農業食料貿易政策協議会(IPC)理事
       東京農業大学客員教授            白岩 宏
 
      欧米の農政改革の動向
      市場志向型構造への基盤整備促進を
       (1)農業者の主体的経営確立に向けて環境整備を

     
つづく
 
   「米政策の総合的・抜本的見直し」<1>  (季刊特集
       藤澤流通・マーケティング研究所代表 藤澤研二
 
      需用者側委員増やせ
      国の関与は食料安保に限定を
      米偏重主義から脱却を
      セーフティネットは保険方式で

     
つづく 
 
   「画期的な消費者視点」<1>  (季刊特集
     〜市場原理中心への転換〜
       和光大学名誉教授 持田恵三
 
      画期的な改革方向
      生産調整の新しい方式
      何のための生産調整か
      不足払いで価格支持を

     
つづく
 
 〜有機米拡大めざした米改革・水田農業振興戦略〜
 
   「環境農業政策の提案」<1>  (季刊特集
      〜日本的地域分権型デ・カップリングを〜
       NPO法人「農と自然の研究所」代表理事 宇根 豊
 
      この政策提言の心根
      新しいまなざし
      環境デ・カップリング〜<水田編>の具体案〜

     
つづく
 
   「水田農業の確立へ向けた政策転換」<1>  (季刊特集
      〜米政策の再構築の課題と方策〜
       山形大学農学部教授 楠本雅弘
 
      崩壊する水田農業〜時間との競争〜
      生産調整は自主選択制へ

     
つづく
 
 〜粗飼料拡大めざした米改革・水田農業戦略〜
 
   「米政策の再構築と稲発酵粗飼料の拡大」  (季刊特集
      〜米政策の再構築の課題と方策〜
       九州大学大学院農学研究院助教授 福田 晋
 
      はじめに
      粗飼料生産からみた「米政策の総合的検証と対応方向」の論点
      稲発酵粗飼料の導入システムと課題

     
読み切り
 
編集室
 
 15年余にわたり構想、提唱してきた米改革・水田農業振興戦略が実現の方向に動き出そうとしている。3分の1世紀という長きにわたり延々と続けられてきた、壮大なる不毛ともいうべき画一的・強制減反は、未だその解決の方途さえ見出し得ないまま行き詰り、政策当局者さえ「閉塞状況」にあることを認めざるを得ないほど、米作・水田農業は縮小再編スパイラルに陥り、構造的危機に瀕している。そういう状況的背景の下で、食糧庁長官の私的諮問機関である米「生産調整研究会」が数量調整を基本とする選択的減反への歴史的転換を提言する「米政策の総合的検証と対応方向」を取りまとめたからである。軋みながらも、ようやく戦後の米政策、米システムの枠組みは、転換、改革に向け動き出そうとしている。
 米改革・水田農業振興戦略は、21世紀の米作・水田農業の改革戦略・戦術、ビジョンを次のようにデッサンしてきた。その戦略的発想は、構造的危機を構造的改革へのチャンスと捉え、危機的状況を打破し、米作・水田農業の希望に満ちた明るい未来へ活路を切り拓き、発展するためには、2000有余年の歴史を誇り、日本の風土に適し、我が日本農業が最も得意分野とし、過剰を生み出し得るほど潜在的生産力が大きい基幹農業部門である米を最大限生産し、水田を最大限活用することにより米作・水田農業を拡大発展し、食料自給率の向上を通じ、農業全体を総合的に発展、農村を活性化させるというものである。それが日本農業が生き延びる道である。
 この戦略目標達成に向け、究極的に生産調整を撤廃、フル生産をめざしソフトランディングする要となる戦術が選択的減反への転換である。これにより市場を通じて価格・需給調整し、需給均衡に近づけていく。同時に、これを梃子に、米を思いっきり作りたい農業者・組織に農地・農作業、米生産等農業生産資源、諸要素が集積され、農地流動化が起り、経営規模が拡大され、専業的・自立的農業者・組織が育成・確保され、就農構造、経営・農地構造、生産構造等、米作・水田農業構造が構造的に改革・調整・再編されていく。これを契機にイノベーションが喚起され、不耕起を含め直播栽培等、技術・経営革新が促進され、米作は大幅な省力化、飛躍的な生産性向上が実現される。これによって低価格の中・外食、加工向け、新規需要開発に対応した需要・生産拡大が可能となる。さらに消費者の安全・安心ニーズに応え、環境と調和した有機米等資源循環・環境保全型稲作の普及拡大に弾みをつけ、多用途需要が開発・拡大され、米の消費・需要が拡大されていく。このようにして国内市場競争力が強化されることが、国際化対抗戦略となる。
 さらに一トン穫り超多収長粒種を開発、国際競争力が強化されれば、国内需要を超える生産量は援助を含め輸出展開できる。そうなればエサ米やエネルギーとしての利用生産も射程に入ってこよう。
 一方で規模拡大する経営に、戦略的作物である麦・大豆・飼料作物等を組み込んで、国内市場競争力を持った高生産性・高品質の輪作・複合経営を確立し、米作・水田農業が展開されていく。このようにして水田が最大限活用され、耕地利用率、食料自給率が向上し、米作水田農業が拡大発展する。したがって、この戦略は、食料自給戦略と農産物輸出戦略の要石であり、二十一世紀食料・農業・農村戦略の基幹戦略といえるのである。 この戦略を構築・展開し、ビジョンを実現するため、戦略を肉付けし、具体的で実効性のある、選択的減反システムを中心とする米作・水田農業システム・政策の抜本的な改革提案を専門家、研究者の方々にお願いしました。 これらの刺激的な提案、構想が、秋に再開される生産調整研究会の議論を喚起し、実り多い最終報告に結実することを期待したい。

週刊農林編集部