〔週刊農林25年4月25日号〕春季特集「食料・農業・農村基本計画の論評」〈1〉



2025年4月25日号
 


 

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 焦 点 カドミ米流通で自主回収
 
 秋田県は4月4日、農事組合法人熊谷農進(小坂町)が生産した米から、食品衛生法で定めるカドミウム基準値(0・4ppm)を超える米を検出し、自主回収を指示した。販売先は、秋田、神奈川、宮城の加工・卸売業者、その他個人販売で、出荷量は8万5972`となる。これを受けて、農林水産省は関係自治体と連携し、関係流通事業者の協力を得て、熊谷農進が販売した米の流通実態(小売店舗名、商品名)を調査し、4月11日に公表した。水田の土壌中に蓄積されたカドミウムが米に吸収されるため、同省ではカドミウム低減対策を講じてきた。カドミウム濃度の高い食品を長年にわたり摂取すると、腎機能障害を引き起こす可能性がある。
 
 農林抄(論説)    著者リスト
 
   地域伝統食を承継し、活用する〈2〉
       金沢大学人間社会研究域准教授 林 紀代美
 
 
 海藻類は、能登半島先端部の奥能登でより多くの種の利用、献立の継承がみられる。半島を南下するにつれて、その消費の量・種類・頻度が低下する。旬には生鮮、乾燥品は通年で、酢の物、汁物、煮物など多様な献立に調理し、日常の食事、冠婚葬祭の会食に利用している。若年層を含めて人々は、季節が感じられ、健康によい食材であること、風味、食感などを好意的に評価している。・・・続きは本誌で
 
     つづく
 
 春季特集 食料・農業・農村基本計画を論評する〈1〉   (季刊特集著者リスト
 
   令和の米騒動が与えてくれたラストチャンス〈1〉
       農的社会デザイン研究所代表 蔦谷栄一
 
      基本法改正の意義
      改正基本法に求められた三つのポイント
      弱体化していない?農業生産基盤
      令和の米騒動と衆院選での与野党逆転
      日本農業生き残りのラストチャンス


     
つづく
 
   農水省は道を誤った〈1〉
       キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 山下一仁
 
      時給10円論の隠された目的
      農家は食料供給責任を果たしてきたのか?
      食料安全保障に反する減反
      亡国農政の誕生

     
つづく
 
   食料・農業・農村基本計画推進で決議
       衆議院・参議院農林水産委員会
 
      改正基本法を踏まえた新たな水田政策を
      国際競争力の高い産地を育成
      合理的価格の実現求める
      日本型直接支払制度の在り方を提起
 
 〔解説〕新たな食料・農業・農村基本計画〈2〉
 
   米・米製品を世界に売り込む
 
      農地の減少はやむなし
      「食料自給力」向上が必須
      コメ安定生産・供給を実現
      コメ生産コストが下げ止まり
      27年度に水田政策を見直し
      新規需要米の需給を拡大する
      米・米製品輸出を現行の8倍に

     
つづく
 
 財政審分科会「米・水田政策の見直し」
 
   MA米の主食用枠拡大求める
 
      多様なニーズを見逃すべきでない
      飼料用米を水活対象から除外を
 
 24年夏の記録的高温に効果のあった適応策
 
   九州は高温耐性品種も影響受ける
 
      高温耐性品種1等米比率が県平均を上回る
      つや姫は西日本で1等米比率ばらつく
      24年産水稲高温耐性品種の1等米比率一覧
 
 農林水産トップニュース
 
 〔経営・構造〕 総務省によると任期が終了した地域おこし隊員の7割が同一地に定住

 〔畜 産〕 農水省が国産豚熱経口ワクチンを25年度後半からの本格散布を目指す方針

 〔米麦・食品〕 農水省の卸・小売団体と意見交換会で地方にまで備蓄米が行き渡っていない

 〔畑作・果樹〕 農水省によると有機農産物の学校給食導入にオーガニックビレッジが効果

 〔林 野〕 林野庁と消防庁が大船渡市林野火災を踏まえ、林野火災対策強化で検討会設置

 〔水 産〕 気象庁によると日本近海の海水面水温上昇率は世界の2倍であることが明らかに
 
 編集室 春季特集にあたり
 
 
 我が国は食料安全保障に関わる大きな情勢の変化や課題に直面おりますが、農地が現在の人口1.2億人分の需要全体を賄うために必要な面積の3分の1程度しかなく、その田畑を担う農業従事者も高齢化や急速な減少が見込まれています。この一方で、生産面においては燃油等のエネルギー源はもとより、肥飼料など海外に依存しており、供給面でも足りないものは輸入すればよい≠ニいう経済通念の下で国家が動いてまいりました。しかし、地球温暖化や世界人口の増加、地政学的リスクなど世界の食料需給の不安定化による輸入リスクが増大し、食料や生産資材の買付けをめぐる競争が激化しており、かつての経済通念は通用しなくなってきつつあります。
 こうした状況より新たな食料・農業・農村基本法では、食料安全保障を基本理念の柱と位置付けた上で、 国全体としての食料の確保(食料の安定供給)に加え、「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義しました。これを受けて策定される基本計画は、改正基本法が定める基本理念の実現を図る観点から、@我が国の食料供給、A輸出の促進(輸出拡大等による「海外から稼ぐ力」の強化)、B国民一人一人の食料安全保障・持続的な食料システム、C環境と調和のとれた食料システムの確立・多面的機能の発揮、D農村の振興について、KPI(2030年)を定めました。具体的数値は今後示されることになりますが、農業生産の基盤となる担い手の育成・確保、多様な農業者(農業を副業的に営む経営体等)による適正な農地の保全・管理を図るとともに、スマート農業技術や多収品種等の先端的技 術の開発・普及等による土地生産性の向上(単位面積当たり生産量の増加)及び労働 生産性の向上(単位労働時間当たり生産量の増加)を図る方針が示されています。
 こうした時代の変調を踏まえ、新たな食料安全保障を実現すべく、弊誌では25年新春特集として「食料・農業・農村基本計画の論評」を企画いたしました。特集のご執筆にあたり、基本法の内容は多岐にわたっておりますため、多様な視点から忌憚のないご意見を頂戴いたしました。新たな食料・農業・農村基本計画を通じて強い日本が再建可能な、真の改革に向けた提言を行っていきたいと思っております。