〔週刊農林25年新年特集号〕新規就農者の定着率を向上する1



2025年新年特集号
 


 

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 焦 点 20代は就農に高い関心
 
 JA共済の農業に関する意識調査で、将来農業をやってみたい20代が52・1%に上った。最近は、短時間で最大の効果を得るタイムパフォーマンス(タイパ)を重視する若者が増えているが、20代の56・1%が「タイパ疲れ」を実感している。このタイパ疲れを実感する20代では60・2%が将来、農業をやってみたいと回答した。また、農業をやってみたい大学生のうち67・5%が将来就きたい職業を見据えてキャリアを選択。卒業後、社会人として経験を積み、農業以外の職業に就いて安定した収入を得たうえで、就農を考えていることが分かった。20代の理想の就農スタイルは、農業と自分のやりたいことを両立する「半農半]型」が支持を集めた。
 
 農林抄(論説)    著者リスト
 
   チーズの消費・流通の現状と展望〈1〉
       チーズ普及協議会専務理事 加藤昌弘
 
 
1.国内におけるチーズの消費推移
 2023年度のチーズ総消費量は、31万5458dであり前年比94・0%と4年連続で前年を下回っている(出典:農林水産省牛乳乳製品課「チーズの需給表」)。新型コロナウイルス禍による業務用を中心とした需要の大幅な減退(家庭用は当初は巣籠り需要もあって順調であったがその後は巣籠り疲れもあって弱含み)に見舞われた。・・・続きは本誌で
 
     つづく
 
 特集 新規就農者の定着率を向上する〈1〉   (季刊特集著者リスト
 
   新規就農者の増加と定着に向けて〈1〉
       東京大学大学院農学生命科学研究科教授 安藤光義
 
      政策担当者の担い手の認識―雇用型大規模法人経営
      数は少ないが前年から増加した新規参入者
      令和5年度白書にみる新規就農者の確保と定着のための条件

     
つづく
 
   新規就農者の定着〜問題把握と取り組みの視座〈1〉
      ―新規就農問題の根本的解決は可能か―
       摂南大学農学部客員教授 柳村俊介
 
      ピースミールエンジニアリングとしての就農促進対策
      農業構造改革による問題解決
      次世代継承システムの比較
      二系列の要素の組み合わせ

     
つづく
 
   新規就農支援の現状と課題〈1〉
      ―若者が就農するためには何が必要か?―
       九州大学大学院農学研究院准教授 渡部岳陽
 
      はじめに
      若手新規就農者数の動向と多様化する新規就農ルート
      新規参入(そして定着)のハードルとは何か?

     
つづく
 
 中酪「酪農家の経営状況に関する調査」
 
   酪農家が初の1万戸割れ
 
      6割の酪農家が赤字経営
      6割超が酪農家の現状しらない
 
 農林水産トップニュース
 
 〔経営・構造〕 農水省によると能登半島地震の影響を受けた作付面積の8割が営農再開

 〔畜 産〕 米国政府がランピースキン病ワクチン接種県からの輸入停止

 〔米麦・食品〕 農水省がこども食堂・こども宅食の政府備蓄米の無償交付申請を統合

 〔畑作・果樹〕 農業女子プロジェクトが次期活動計画、プロジェクト推進体制を見直し

 〔林 野〕 林野庁が製材工場等の木材産業における火災対策のポイントを整理

 〔水 産〕 富山県が水槽内でアカムツ(ノドグロ)を稚魚に育てることに成功
 
 編集室 新年特集にあたり
 
 
 個人経営体で主に農業に従事する基幹的農業従事者は、2000年の240万人から2022年には123万人と半減しております。我が国の基幹的農業従事者(23年2月1日現在)は65歳以上が70.8%を占め、49歳以下は11.5%(39歳以下は4.8%)と著しくアンバランスな状況にあり、年齢構成のピークも70歳以上層となっています。20年後の基幹的農業従事者の中心となることが想定される現在の60歳未満層は全体の約2割の25万人程度にとどまっています。
 現行の食料・農業・農村基本計画が示す「農業構造の展望」では、2015年の農業就業者及び役員等数は208万人であったのに対し、趨勢のまま推移すると2030年には131万人まで減少すると試算しております。なかでも、49歳以下の若手就農者数は35万人から28万人へと7万人減少すると見通しております。一方で、持続可能な農業構造を実現するためには37万人の若手就農者が必要と示しており、この差である9万人を埋めなければなりません。
 現在、改正食料・農業・農村基本法に基づき基本計画の見直しが進められていますが、現行基本計画策定時よりも農業就業者の状況は悪化しており、もはや我が国農業は存亡の危機に直面しているといっては過言ではありません。例えば、新規就農者数は、2015年をピークに減少傾向にあり、2022年の新規就農者数は4.6万人にまで減少しました。このうち、農業法人等に雇われる形で就農する新規雇用就農者は、2015年以降は1万人前後で推移しています。年齢別(2022年)でみると、40代以下が73%、出身別では非農家出身者が87%と多数を占めております。
 我が国の食料安全保障を実現する持続可能な力強い農業を実現していくためには、農業の内外からの新規就農を促進し、世代間バランスの取れた農業構造を実現することが重要となっております。農林水産省が行った就農から概ね10年以内の非農家出身の新規参入者を対象にした調査では、就農の理由は、「自ら采配を振れる」といったビジネスとしての魅力を感じている者が約半数に上り、「農業が好き」、「自然や動物が好き」、「農村の生活が好き」など農的な生き方に魅力を感じている者も多いことが分かりました。しかし一方で、「せっかく確保しても定着しない(離農する)」という問題も抱えております。
 今後ますます若い人材の獲得競争が激化することが予想される中においては、就農した若い農業者の定着率をいかにして向上するかが重要なポイントになるかと思います。そのためには、農業技術の習得をはじめ、資金・農地の確保など多くの課題が山積しております。そこで、2025年新年特集として「新規就農者の定着率を向上する」を企画いたしました。新規就農者の定着率向上に向けた課題・ポイントを整理し、就農支援の在り方等について提起し、新たな就農支援ツールとして提起していただきました。ここに掲載いたしました諸論考が農業振興・地域再生への一助となれば幸いです。