2021年新春特集号
 

 
 

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 焦 点 20年度第3次補正予算を閣議決定
 
 政府は12月15日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う追加経済対策として、一般会計で19兆円の追加歳出を行う、20年度第3次補正予算案を閣議決定した。新型コロナウイルス感染症の拡大防止策に4兆3581億円を計上、さらにポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現は11兆6766億円と、これを上回る。農林水産関係は1兆519億円(公共4549億円、非公共5971億円)を支出する。2030年輸出5兆円目標の実現に向けた「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」の実施として396億円を措置した。また、水田の畑地化・汎用化・大区画化等による高収益の推進に向けて700億円を盛り込んだ。
 
 農林抄(論説)
 
   ポストコロナの行方を占う〈1〉
      ―どんなやり方が良いのか−
       宮城大学名誉教授 大泉一貫
 
 ポストコロナがどうなるか私には見当もつかない。「ポストコロナの行方」と言った大それたテーマで書くのはつらいものがある。確かなのは、コロナで世の中の不確実性がますます高まり、リスクや不安がいや増していることだろう。・・・続きは本誌で
 
 新年特集 農村文化伝承と農村振興をつなぐ<1> (季刊特集著者リスト
 
   地域固有の伝統文化の革新的価値を問い直す<1>
       宮崎大学地域資源創成学部准教授 井上果子
 
      はじめに
      現代の人々にとっての農山村文化の意味
      伝統文化の革新的価値

     
つづく
 
   祭り・芸能の継承と地域社会−各地の取組<1>
       國學院大學文学部教授 小川直之
 
      東日本大震災からの復興のなかの祭り・芸能
      地域の文化資源としての祭り・芸能
      祭り・芸能を継承するための取組み

     
つづく
 
   世界農業遺産の島<1>
      ―トキと共生する佐渡の里山―
       佐渡市役所農業政策課里山振興係主任 北見敦史
      
      はじめに
      佐渡島の概要
      棚田の成り立ち
      多様な農村文化

     
つづく
 
   民具は宝-農村文化の可能性<1>
       神奈川大学国際日本学部教授 佐野賢治
 
      人間中心主義の行方―コロナ禍断想―
      民俗芸術と農民芸術−柳田国男と宮沢賢治

     
つづく
 
   伝承文化としての農村振興<1>
       熊本大学大学院人文社会科学研究部教授 山下裕作
 
      「伝承文化」とは?
      農業・農村における「文化」
      世代を超えた心・意志

     
つづく
 
   農村文化の伝承と農村づくり<1>
     ―農村文化を活かすから活きる農村づくりへ―
       農村づくり・ICT支援研究会会長 山本徳司
 
      文化施策はいつも後回し
      活かすから活きるへ
      農村文化保全施策の盲点

     
つづく
 
   農村文化の文化はなぜ消える?<1>
     ―過疎化、高齢化、それとも市町村合併?―
       京都府立大学文学部教授 宗田好史
 
      今進む人口減少とは
      農村文化が伝承されなかったのは?
      農村文化の伝承を望むのはだれか?
      農村の戦後史を顕彰した先に伝統文化が見える

     
つづく
 
 
 編集室
 
 我が国は過去、市町村合併を繰り返すたびに、その地に連綿として受け継がれてきた地域伝承や有形・無形の多くの農村文化を失ってきました。しかし最近になって、地域の伝承や農村文化が大きく見直されています。東日本大震災によって震災遺構や言い伝え等による地域伝承の存在が大きくクローズアップされ、また外国人旅行者によるインバウンドを通じて、地域の伝統文化や伝承の貴重性という「日本再発見」に多くの人が気づかされたのではないでしょうか。農村文化に敬意を払う外国人たちの行動は、地方への活力・機動力にまで影響を及ぼしました。それはハコモノ整備による地方支援とは異なる、農村が有する食・生活文化や文化遺産・災害遺構など、農村文化・民間伝承の保全・伝承こそが農村振興の真の姿であるととらえることができます。さらに最近は、農村文化や地域伝承を後世に伝えようと、ICT等のデジタル化による伝承の研究も進められております。
 新型コロナウイルスによる感染拡大によって懸念されるのが、目先の経済活動にとらわれるがゆえに、貴重な地域資産≠ナあり、かつ地域資源≠ナもある地域伝承や有形・無形の農村文化の伝承・保全活動が後回しにされてしまうことです。そこで、地域活性化に結び付く、農村が有する有形・無形の農村文化・民間伝承の保全・継承の仕組みを構築するため、弊誌2021年新年特集として「農村文化伝承と農村振興をつなぐ」を企画いたしました。地域のかけがえのない農村文化・伝承を次世代に伝え、残すことで、その価値は高まるものと思われます。こうした地域住民の活動を通じて、関係人口の増加を図ることも新たな課題となっております。農村文化・伝承を適切に保全して、文化的な住みやすい農村環境を整備することで多様な主体が住み続けられ、農村の永続性にもつながるものと思われます。
 ここに掲載いたしました諸論考が、農業振興・地方再生への一助となれば幸いです。

週刊農林編集部一同
 

週刊農林 21年1月5日号(新年特集号)