2002年新春特集号
 

  

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農林抄 (論説/米と乳製品の輸出戦略への提言)
 
   文化戦略としての農産物輸出
       日本大学商学部教授 梅沢昌太郎
 
 世界的な食品展示会として、シアルとアヌーガがあります。前者はフランスで、後者はドイツで隔年ごとに開催されています。このフェアにはほとんどの国が参加しています。残念ながら、日本は数年前から、どちらのフェアにも参加していないと聞いています。以前は農林水産省のサポートを受けて、ジェトロが展示を担当し、日本の食品をPRしていました。・・・



特 集 「米と乳製品の輸出戦略」<1> 
 
 〜水田農業の発展めざしたコメ輸出戦略〜
 
   「目標は経済民主主義」 
      〜農業=輸出産業化論:再考〜
       拓殖大学国際開発部教授 叶 芳和
 
      日本は衰退過程に入ったか
      農業は輸出産業になれるか
      中国の農業輸出課に学べ

     
読み切り
 
   「アジア市場鳥瞰したコメ戦略を」
       丸紅経済研究所首席研究員 柴田明夫
 
      国内のコメ市場は閉塞状態
      「アジアのなかの日本」という視点
      アジアにおける飼料用米の開発

     
読み切り
 
   「コメの輸出戦略構想」
       IPC(国際農業食料貿易政策協議会)理事 白岩 宏
 
      はじめに
      なぜコメの輸出戦略構想を提言するのか
      付表・米国農産物貿易
      付表・日本の農林水産物貿易

     
つづく 
 
   「持ち株会社方式で米輸出を」
       オイシックス(株)取締役副社長 福井栄治
 
      米問題の現状
      (1)第1段階〜輸出用米生産地の創出
      (2)第2段階〜援助用米としての活用
      (3)第3段階〜輸出用米の販売会社の設立
      (4)第4段階〜持ち株会社の設立
      まとめ

     
読み切り
 
   「嗜好的加工品で輸出拡大を」
      〜清酒輸出で日本食文化を普及宣伝〜
       藤澤流通・マーケティング研究室
       三井物産戦略研究所客員研究員  藤澤研二
 
      高付加価値の米加工品有望
      日本食文化と深く関わる清酒
      官民あげて輸出市場開拓を
      付表・清酒の輸出金額と単価

     
つづく
 
 〜酪農の発展めざした乳製品輸出戦略〜
 
   「カナダの乳製品輸出に学ぶ」
      〜比較劣位品目の輸出〜
       九州大学大学院助教授 鈴木宣弘
 
      強固な政策体系
      輸出を可能にするメカニズム
      小括

     
つづく
 
   「乳製品市場の拡大に向けて」
      〜乳製品の輸出と備蓄〜
       東京大学経済学部助教授 矢坂雅充
 
      アジアで乳製品需要増加
      乳製品を備蓄構想の対象に
      輸入在庫は緊急措置に限定
      「アジアブランド」として普及拡大を

     
つづく
 
編集室
 
 新ミレニアム2年目を迎える新年特集号の統一企画テーマは、「水田農業と酪農業の発展をめざした米と乳製品の輸出戦略」としました。
 戦後、30年以上も米の減反を続けてきたにもかかわらず、いまだその解決の方向さえ見えてきません。それどころか、その間に、農業者の高齢化と相俟って、耕作放棄地の増加、耕地の減少、世界最低水準へ食料自給率の低下、さらには農村活力低下等々、日本農業は構造的危機が一段と深化し、衰退に向かう様相を呈しております。加えて日本農業をめぐる国際情勢は、WTO交渉の立ち上げが宣言され、中長期的に農産品関税の削減・撤廃、一層の農産物市場開放を迫られようとしています。さらに中国が先手を打ってASEAN諸国と自由貿易協定締結に向け動き出したことで、日本はアジア自由貿易・経済圏構築に向け、早急な対応を迫られています。その際、ネックとなる農業貿易の自由化を例外とできるのか、決断を迫られます。既に中国から開発輸入の形で野菜等が洪水のように押し寄せ、次は米の開発輸入とも言われ、農業の空洞化が一段と進むことが懸念されます。このようにいま、日本農業は、戦後最大の危機に直面し、縮小再編・衰退か拡大発展かの岐路に立っています。
 こうした危機的状況を打開し、日本農業の明るい21世紀の活路、展望を切り拓き、発展を図るため、本誌は、日本農業の得意分野を活かし、国土資源を最大限に活用しうる、かつ過剰を生み出し得るほどの潜在的生産力が高い米と生乳を最大限拡大生産し、日本農業の2大部門である水田農業と山地・草地酪農を両軸に、食料自給率の向上を通じ農業全体を総合的に発展、農村を活性化させる米改革水田農業振興戦略、酪農改革草地畜産振興戦略、農産物輸出戦略を柱とする食料自給戦略を提案してきました。
 その基本戦略は、米については第1段階で選択的減反をテコに水田農業構造改革(経営自由度の拡大による経営規模拡大や自然・有機農業の振興拡大による高品質・高付加価値化、国内需要を超える分への1トン取り長粒種の開発による作付転換、不耕起直播栽培の確立普及による省力化、低コスト化)を進め、国内市場競争力を強化し、国産の国内需要を拡大する一方、生産余剰分は、当面、援助市場を開拓し、援助輸出を拡大する。第2段階の中長期的には、減反を撤廃・フル生産できる国際競争力を強化し、援助輸出で開拓した開発途上国との関係強化をベースにコマーシャルベースでの輸出もめざすというものです。
 このモデル的な輸出戦略を肉付けし、より具体的で実効性のある構想・戦略とするため、20年前、米の輸出産業化論を提唱された叶芳和拓殖大学教授に、いま時点での米輸出を可能とする条件など構想を再度ご提案いただくとともに、輸出実務に詳しい商社マンや研究者の方々にもご参集いただき、刺激的で壮大なご構想、アイデアをご提案頂きました。その中には、極めて前向きに検討に値する構想・アイデアが含まれています。21世紀に明るい希望に満ちた農業、とりわけ水田農業と酪農の展望を切り拓くため、米政策や酪農政策の真の総合的・抜本的な見直し、改革に向けた議論、検討の一環として、また東アジア米備蓄構想や国際食料備蓄構想と併せ、輸出産業化へのスタディ、研究プロジェクトの立ち上げを含め、タブーなき議論が沸騰することを期待するものであります。

週刊農林編集部