2000年7月25日号
 

  

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農林抄 (論説/農業IT革命への提言)
 
   IT革命と食品流通行政の役割   農水省食品流通局企画課課長補佐 吉田竹志
新本年6月30日経済審議会でとりまとめられた「『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』の実現に向けて」において、その副題「IT革命を起爆剤とした躍動の10年へ」が示すごとく、IT革命の推進は、この先10年間の我が国政府の最重要戦略課題として位置づけられている。・・・
 

 

特 集 「IT革命が農業農村を変える」 <1>
 
   農業・農村IT利活用体制の整備 <1>  JA長野中央会総合情報システム室課長 曽根原 正
      〜JA長野県グループの取り組み〜
 

     JANISネットの始動

     県域アグリネット構想の目的と概要

     付表・JA長野県ネットワーク構成概念図

 
   IT化は農業問題解決の糸口 <1>  農業情報利用研究会専務理事 田上隆一
 

     IT革命とは

     IT革命の意義または効果

     IT農業の可能性

     消費者にとっての農業情報

     農業生産情報システムの構築

 
   農産物認証システムのIT化 <1>  農業研究センター研究情報部上席研究官 二宮正士 
      〜山形県鶴岡市の事例「だだちゃ豆販売」を通じて〜
 

     生産情報入力しラベリング

     生産・消費双方向で情報交流

     産直・量販両面にメリット

     付表・山形県鶴岡市における枝豆農家での認証システムとIT活用事例

 
 
   米国における農業分野のIT化 <1>  日商岩井(株)オーガニックグループリーダー 福井栄治 
 

     生産現場におけるIT化の動き

     経理処理の機能

     農作業の工程管理

     インターネットを活用した農業分野での情報技術

 
   ITを生かすも殺すも農業者の「姿勢」次第 <1>  社会基盤研究所主任研究員 藤澤研二 
      〜国内農業改革こそ最大のWTOだ〜
 

     はじめに

     情報利活用の構造とポイント

     農業にITを活かすために

     付表・情報の提供から利活用の構造

 
   情報化が農家を変え、町を変えた <1>  内子フレッシュパークからり情報センター主任 森本純一 
      〜愛媛・内子町の取り組み〜
 

     POS導入し出荷調整

     消費者の生の声が生き甲斐

     付表・からり情報ネットワーク全体図

 
   農産物の電子商取引の現状と今後の展望 <1>  ワイズシステム(株)青果物部門総括 山本謙治 
      〜電子商取引(EC)の取り組み事例の最新動向〜
 

     インターネット・ECの普及と農産物流通

     農産物におけるBtoC

     BtoC(小売)−ECの混迷と今後

 

編集室

 
 本年の夏季特集号は、『IT革命が農業・農村を変える』を統一テーマとしました。ご承知のように、いま農業革命、産業革命に次ぐ産業文明の潮流といわれる、情報革命、いわゆるIT革命の大波が津波のように世界中を席巻しています。日本にも、いや日本の農業・農村にも例外なく、その大波が押し寄せようとしています。コンピュータや携帯電話など情報通信技術の飛躍的な発展を背景に、インターネットの爆発的な普及とそれによる情報ネットワーク化が経済の効率性、生産性を飛躍的に高め、産業経済だけでなく、社会、文化を大きく構造変化させる、世界大の経済社会のパラダイム・シフトを迫っています。

 こうした情報革命による高度情報化社会のターニングポイントにあって、「IT革命の本命」といわれる農業・農村分野において、IT革命は、それをどのように変えていくのか、そのビジョンを明確に提示するとともに、農業構造改革―国際競争力の強化と農村の活性化へ、いかにITと情報ネットワークを最大限に活用していくか――食料・農業・農村のIT化戦略を早急に構築し、展開していく必要を迫られています。

 いま、IT革命の象徴である電子商取引(EC)では、生産者と消費者との直接取引(BtoC)から、生産者・組織と流通・販売業者との取引(BtoB)へ、産直型のインターネット通販から、バーチャル・ショッピングモールといわれるサイバーモール、さらにそれが専門化した食品専門モール、ネットスーパー、そしていま、卸売市場取引をインターネット上で行うバーチャル市場におけるオークションなどプラットフォーム・ビジネスが起こりつつある段階にまできています。需要・供給双方が直接取引に参加できるネットワーク型市場取引とそれによる価格形成は、飛躍的に安くて早い取引を可能とし、市場間競争を惹起するなど、農産物・食品流通市場構造を抜本的に変革しようとしています。このことは、農業経営面では、農業経営者が直接消費者と、またネット仲介を通じて消費者や小売業者と結びつくなど、多様なマーケティングの展開、多様な販売チャネルの機会を得ることで、自分で作った農産物・加工品を取引し値決めできるなど作り売る自由度が増すとともに、多様な消費者・市場ニーズを生産や出荷量調整など農業経営にストレートに反映させることが可能となります。さらに経営革新と相俟って、地方自治体や地域農業団体が開設するホームページやショッピングサイトを通じて、地域の歴史や文化、景観、イベント、農産物・加工食品など地域資源情報を直接大都市、消費者に発信し、交流を活発化させることも期待されます。

 このようにIT革命・インターネット革命は、流通・市場の構造変革や農業経営の革新を通じて、農業構造改革にインセンティヴを与え、農村を活性化させていくと展望されます。

 本企画では、IT革命の震源地・アメリカにおける農業・農村のIT化事情やネット・アグリビジネス・モデル&ビィレッジ・モデルともいえるモデルケースの紹介を含め、食料・農業・農村分野におけるIT化の流れとビジョン、IT化戦略についてご提言頂いた。これらの提案、モデルケースが読者各位のIT化戦略の構築と実践に参考となれば幸いです。

週刊農林編集部